誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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伊東駅死番線 あとがき
伊東駅死番線、つまりあるはずのない四番線ですが。気づいた人もいるかもしれませんが、ハリー・ポッターのキングス・クロス駅9と4分の3番線から思いつきました。いつかどこかでこのアイディアを使おうと思っていたところ、伊東市で今年の7月11日からぷらんぽ電車が運行開始。では、四番線を走らせてしまおうと思ったわけです。小説中では前作に引き続き「ぶらんぽ」の名称にしています。
実際の「ぷらんぽ電車」ですが、2014年12月まで運行する予定です。伊東にお立ち寄りの際には是非お乗りください。ちなみに空は飛びませんし、一碧湖へも行きません(笑)
作中に出てきた七福神の寺社の他に、伊東市内には七福神の湯という銭湯があります。伊東のこととて銭湯も温泉です。伊東に観光の際は入浴してみてください。
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ではまた、次回作まで失礼します。さようなら。

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伊東駅死番線 第九章 一碧湖神社
一碧湖西岸、一碧湖神社の白い鳥居の前にはまだ夥しい数の遺体が散乱していた。紅葉広場が紅葉ではなく血で赤く染まった。検死と回収作業が進んでいる。遺体には取り立てて食われた痕も無いから、赤牛は食べるのが目的で人々を殺したわけでは無さそうだ。数百年前に人間たちに封じ込められた恨みを晴らすのが動機か。
横を見ると美香が手を合わせて拝んでいた。白い頬に涙が伝っている。普段は天然でも、こういう純真な心を持っている子だ。
「もうこれ以上誰も死なないから、安心して」と慰めると、
「でもね」と百合さんが、
「光栄寺の日広上人は、七日七晩お経を唱えたのよね。今回は一瞬お守りを掲げただけ。またいつ出てくるか…」
遺体を見て嘆く遺族たち、そのそばを沈んだ気持ちで歩いていった。
ああ、小さな赤いワンピースの女の子、あんな小さい子まで亡くなったのか。そばで泣いているのはそのお婆さん?
ふと、遺体を見て泣いていたお婆さん、私達を見上げて顔がほころんだ。
「あなた達かね、化け物を退治してくれたのは」
「え、ええ」
「ありがとねえ、良かったよお、あなたたちが伊東に居ていれて」涙の痕の残った顔、その顔をしわくちゃにして、お婆さん微笑んで…私なんかを拝まなくても…泣けてきちゃうから…
大好きなこの街、少しでも良くなるように、これからも頑張っていこう。
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伊東駅死番線 第八章 赤牛
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頭頂部から横へ、太く鋭い二本の角が逞しく張り出している。ぶもおおおおっ、と高い雄叫び。鋭い目つき、荒い鼻息。よだれを垂らしつつ赤茶色の巨体を震わせ、こちらへ突進してくる!
「いやぁん」緊張感をそぐ美香の声。
赤牛が巨大な口を開け、乗り捨てたボートをがりがりがりっ、と音を立てて粉々に噛み砕いた。
「百合さぁん、牛って草食だよねぇ、私達食べられないよねぇ…」
「いや妖怪の食生活までは私も知らないけど…」
荒い息を吐きながら疲れた様子で赤牛が島へ登ってきた。お疲れでしたらご無理なさらずに…
赤牛の熱い息が私にかかろうかという時、ざばあっ、と水面からダイバー達が顔を出した。振り向いて驚いた赤牛、怒りに震えてはいるが多少は勢いをそがれた様子。
「かかったわね!」ダイバーは胸元へ、私達はポケットへ手を入れた。一斉に赤牛めがけ腕を伸ばす。私達三人と、ダイバー四人。手には七つのお守り…七福神のもの。
赤牛の怒りに満ちた顔が恐れに満ちた。ぶもっ、ぶもっ、と弱気な鳴き声。
たちまち七つのお守りから閃光が発する。聖なる光に包まれた赤牛。断末魔の悲鳴があがる。
うぎゃああああっ、光の中で赤牛は美女、龍、電車の形態を次々にとる。何に化けても逃れられぬと悟ったのか赤牛に戻るとそのまま燃え尽きるように消えてゆく…
まぶしさに目を細めていたが、光が止み目を開けるともうそこには何も残っていなかった。
ダイバー達が笑みを浮かべ島にあがってきた。
「海坊主の時も怖かったが…」と息をつく城ケ崎の海野さん。お久しぶりです。
「今日はありがとうございます。また変な物が出たらよろしく」と百合さん。
「美人の頼みでも嫌だな…」と苦笑する海野さん。また変な物がでるのは私だって嫌です。

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伊東駅死番線 第七章 再戦
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行きたくないけど再び一碧湖に行かねばならない、これ以上の被害者を出さないために。庁用車で一碧湖東岸のボート乗り場へ。この騒ぎでボートなんか貸してくれるのかと思ったが、以前にも妖怪退治をした観光課職員だと説明すると、
「ああ、あのお嬢ちゃんたちかい」と機嫌の良くなったボート乗り場のおじさん、ちゃんと貸してくれた。
「きっと赤牛も退治してくれよ」と頼んだ割には三十分八百円の料金はしっかり取ったけど。
一碧湖東岸から西岸の一碧湖神社の方角を目指す。これって、ほとんど挑発行為というか、自殺行為というか。
青い空、穏やかな湖面、爽やかな風。脚漕ぎの白鳥のボートなどを眺めていると、とても平和な観光日和だ…状況を考えなければ。今日はさすがに釣り人も見当たらない。
百合さんはスマホで伊東市の地図をチェック中。美香はにこにこと晴れた空を眺めながら遠足気分で鼻歌を歌っている。こんな時にぶらんぽのテーマソングかいな。で、一番体力のある私がボートを漕がされてる訳ですが。湖の中ほどを過ぎても赤牛さん、まだ出ない。牛だからのんびりしてるのか。疲れてきましたけど。
「お経島が見えてきたわね」と百合さん。振り向くと、成程お経島の目印の赤い鳥居が見える。木々が手入れもされずに生えた、ごく小さい島だ。「たぶん、そろそろ…」
ばしゃあああっ!と水しぶき。揺れるボート、みんな必死に伏せる。なんとか転覆せずに済んだ。
ボートよりはるかに大きな牛がそこにいた。赤い巨体から水をしたたらせ、険悪な目つきでこちらを睨んでいる。
「お経島へボートつけて!」いや、分かってますけどね。幾ら体力勝負の私でも、いい加減、腕がくたびれてまして。
とにかく必死に漕いで、なんとか鳥居にボートをくぐらせた辺りで、
「もういい、走って!」服が濡れるのも構わずボートを捨てて島へ駆け上がった。

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伊東駅死番線 第六章 ニュース
一階市民課の前の大型テレビ。市民はもちろん、職員達も仕事どころではなくテレビのニュースを見つめている。
素人が映した動画らしい。一碧湖畔の木々の向こうから10両編成のスーパービュー踊り子が現れた。…どうでもいいけど、大池の赤牛さん、鉄道マニアなん?
「UFO?」「電車だ!」というカップルらしい声が入る。
スーパービュー踊り子
白と青緑の車体が段々大きくなる。一号車の展望席で立ち上がって何か喚いているらしい乗客が映った。だが、電車はためらいもせずに湖水に飛びこむ。ばしゃああん!という音と共にカメラにも水滴がかかる。
「きゃあ!」「うおっ!」という声。
最後のダブルデッカーと展望車が水の中に沈むまで、あっと言う間だった。やがて浮かんできた大量の死体にはモザイクがかけられていた。
「…一碧湖に上がった死体は、本日、伊東駅から電車と共に消えた乗客と一致しました。わずかに残った生存者達は、『伊東駅四番線には乗るな』などと意味不明なことを口走っています」
「今日も同じ手で人をさらってるの?」
「明日も明後日もさらうつもりでしょうね」腕組みをしてテレビを睨みつける百合さん。
「…昨日消えたぶらんぽ電車との関連を調べています」
職員達がひそひそ話しながら私達の方を見る。
「…なお、先だって伊東市の妖怪退治をした美女三人がぶらんぽ電車に乗っていたという情報もあり…」
正確には、美女二人及び大したことのない容姿の私ですが。
「…今回の事件の解決にも期待がかかります」
「なんか勝手に期待されちゃってるよぉ。どーするぅ?」口をとがらせる美香。
「うーん」これは市役所観光課職員の職務の範疇なのか?市長さん、特別手当ください。
「赤牛は水の中…ちょっと、思いついたわ。またお世話になる方が必要ね」
百合さん一人に任せれば何でも退治できる気がしないでもない。

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