誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
伊東妖怪伝 第三章 大室山大蛇穴
「美香の遺志は私が引き継ぐっ」と百合さん。
「美香死んでないっす」
 こんな冗談も言えるくらい簡単に美香は回復した。お見舞いありがとぉ、おリンゴ食べる?と微笑む美香に私達二人はあっけにとられた。入院した当初は死人のように冷たかったのに。本気で泣いた私はなんだったのか。お医者さんも看護婦も首をひねっている。
あの事件のせいで『ぶらんぽ』は伊豆新聞ほか各紙に取り上げられ、詫び証文を破った不祥事にも関わらず赤沢課長は『ぶらんぽ』編集の継続を決定した。何か変だ。
それに、あれから伊東では群発地震が続いている。市役所地下の災害対策本部があわただしい。屋上に設置されたNHKのカメラの映像が、連日ニュースで映されている。不思議なのは、震源が大室山と門脇埼灯台付近のみで移動しないことだ。
今日はその大室山に、大蛇穴の取材に行かねばならない。
かつて大室山に大蛇が住み、辺りの村の家畜を食い荒らした。たまたま大室山に源頼家が狩りに来て村人達も手伝わされたので、この機会に村人は源頼家に相談した。頼家の家来、和田平太が退治に出かける。平太は単身洞窟に入り、見事大蛇の目を刳り貫き、頼家のもとへ持ち帰ったそうな。単に洞窟を埋めればよかったような気がするが。

今日は庁用車を百合さんが運転。大室山までぶらぶら歩いたら散歩でなく遠足になってしまう。市役所から国道135号を下って、ぐらんぱる入口で右折。芝生に覆われたずんぐりした大室山が見えてきた。ふもとのさくらの里へ。今は三千本の桜の木々に花は無く、葉が生い茂っている。
0186-thumb.jpg「春に来れば楽しいのに」と私。
「お仕事だってば」
大蛇穴の前で車を停めた。柵があり、その前に「穴の原溶岩洞穴」の看板。木々の隙間から、黒い穴が見える。
「大蛇が住んでる割には小さいのね」
「昔はもっと大きかったんでしょ」
覗き込んでいると、なぜか視界がぼけてきた。あれ?肌寒い。なんで?まずい。またあの赤い顔だ…見覚えがある…ああ、段々冷えていくよ…
はっと気が付くと、百合さんが私の眼前にお守りを掲げていた。仏現寺のものだ。何でいつも冷静に行動できるんだ、この人は。
「…用意がいいですね」
「当然でしょ。美香のこともあったし。良かったわね」
と微笑む百合さん。
「あ、あんまし良くないみたい…」
つぶやく私の目の先、穴の中に光る眼が一つ。もう片方は平太クンにやられたのか。その下でチロチロ動く長いものは舌?
「魔魅!すぐ車に乗って!」
転がるように車に乗り込むと、百合さんこんな運転も出来たんだ、と思うような猛スピードで発進した。

小説 ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

スポンサーサイト

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。