誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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曽我物語異聞 第四章 奥野ダム
かつて、伊豆に流されていた源頼朝を慰めるため、伊東祐親が近隣の武士達を集め、奥野で盛大に巻き狩りを行った。狩りの後の余興に相撲が催され、伊東祐親の嫡男、河津三郎が俣野五郎を河津がけで破った。その巻き狩りの帰り道で河津三郎は射殺されることになるのだが。現在、奥野ダムのダム湖である松川湖畔には河津三郎の相撲モニュメントが建てられている。
「河津三郎…ふん、曽我兄弟の父親など…」夜空を行く工藤祐経。
「これ以上の狼藉は許しません!」追いかける八重姫。
と、その前にぼうっと現れた黒い影二つ。星明りに照らされたところでは、狩装束というやつか、自分の身長ほどの弓を持ち、背中に矢を背負っている。
「小藤太、三郎、頼んだぞ!」と前方を飛んでいる祐経が叫ぶ。大見小藤太と八幡三郎…工藤祐経の家臣で河津三郎を暗殺した張本人である。
咄嗟に低空飛行する八重姫。と私達の頭上を矢が掠めていった。
「うわぁ!」「きゃぁ!」
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なんとかダムの下の奥野公園に降り立った私達。噴水やら木製迷路橋やらがある。普段の美香なら、ねぇ遊ぼうよぉ、とか言いそうだが、八重姫が憑りついている今は凛とした顔で上を見上げている。市役所の制服に身を包んだお姫様というのも何か変だけど。どんな攻撃が来るか…と待ち構えていると、敵二人はおもむろに矢をしまい弓を背負った。
「ん?何をする気?」不思議に思って見上げる私達。
小藤太と三郎の体が黒い怨念に包まれてゆく。二人の前には、伊豆唯一のロックフィルダム、奥野ダム。ダム湖である松川湖には水が満々と湛えられている。
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「まさかっ。逃げましょう!」と百合さんが叫んだが…
奥野ダムの堤体の分厚い壁に、大見小藤太と八幡三郎の黒い塊がぶち当たる!ごごごっ、めりめりっ、と煎餅でも砕くように簡単に裂け目が出来た。
ごおおおお!轟音と共に奔流が谷間を満たす。家ほどもあるダム壁の瓦礫が頭上から降ってくる!
「卑怯なことをっ」私達の腕をつかみ飛び立つ八重姫、瓦礫はかろうじて避けた…ものの、奔流に巻き込まれてしまった。ものすごい水圧に飛ぶこともならず、三人流される。上か下か分からぬ状態で、しこたま水を飲んだ。
ようやく浮き上がって、八重姫が飛び立とうとする。すると、すかさず矢が飛んでくる。そんなことを繰り返して水流に身を任せているしかない状態。
げほげほと水を吐きながら、だいぶ松川を流されてしまった。ここは万葉の小道の辺りか。和歌を刻んだ碑が立っていて散策に適したところだ。「朝露に咲きすさびたる鴨頭草の日くるるなへに消ぬべく思ほゆ」今は私の命の方が消えそうですが。
と、前方の稚児ヶ淵から白い球体が飛んでくる。「何あれ?」見ている間に私達の頭上を飛び越えると、大見小藤太へ、そして八幡三郎へぶち当たった。
「うおっ」「ぎゃっ」とのけぞる二人。あどけない少年の霊が二人の前に立ちはだかっていた。
「あれは…わが子、千鶴丸!」
松川の稚児ヶ淵…八重姫と源頼朝の子、千鶴丸が沈められた場所だ。
「母上、お久しぶりです」と振り返り微笑む千鶴丸が「ここは私が食い止めますから、祐経の来ないうちに東林寺へ!」
「おお、すまぬ!」
親孝行な息子で良かったね。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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