誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
曽我物語異聞 第六章 終曲
「で、もう深夜になっちゃったんだけど」と困った顔の百合さん。色々あって時間まで気づかなかった。
「あ。この暗い中で参道を下まで降りるん?」
「やだぁ。幽霊が出るぅ」
「てゆうか、さっきまで工藤祐経の幽霊やら曽我兄弟の幽霊やら色々出まくってたじゃん」
「あまつさえ美香は八重姫の幽霊に憑りつかれてたわよ」
「むー」
「…えーと美香、もう一度私達の手を握って空飛んでくれない?」
「飛べるわけないじゃん」ふくれっ面の美香。
結局、やむをえず細い不気味な参道を下まで降りて行くことになった。星明りがあるとはいえ足元がおぼつかない。昼間なら海や伊東の街並みがよく眺められてハイキング気分なのに。ところどころにある石仏が動きだしそうで怖い。たまに顔に蜘蛛の巣が引っ掛かる。
「ほとんど肝試しよ、これ」と私がぼやくと
「妖怪だの幽霊だの倒してきた私達でしょ」と百合さんにたしなめられた。
「ところで美香、八重姫様に憑りつかれてた時、意識はあったの?」
「うん、何か楽しそうだなぁ、と思ってみてたよぉ」
「…ここに一人で置いといてあげようか?」
「いやぁん」美香は眼をつぶって私にしがみついている。
やっと、参道の下まで降りてきた。「河津三郎祐泰之墓参道」と書かれた石碑や日本相撲協会の相撲碑が場所柄、墓石のように見える。
0047.jpg
「はあ、やっと降りた」と息をついて東林寺の山門の外を眺めると、パトカーや市役所の庁用車が待っていた。おっかない顔で腕組みした警官や市役所職員達。
「…で、今日ずいぶん色々伊東の街が壊れたのを警官や上司にどう説明すれば?」と困って呟くと
「私達のせいじゃないのにぃ」泣きそうな美香。
「祐経の怨霊よりも怖いかもね」ため息をつく百合さん。
…まったく、観光課の仕事やめたろかな。

小説 ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
スポンサーサイト

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。