誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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日蓮伊豆法難 第二章 弥三郎
かたわらの松に袈裟をかけ、さして寒い様子もみせず辺りを見回す坊主。緑の多い野や山を見て莞爾と笑った。
「良い所じゃの。おぬしの家はこの辺りか?」
「ちくと離れた川奈に住んどる。お前さん、罪人とか言うとったが、これからどうするつもりじゃ」
「おぬしの好きにしてよいぞ。日蓮という坊主を捕らえたと名乗りでれば、褒美でも貰えるかも知れぬ」
そう言われて名乗り出られるほど悪人でもなかったこの漁師、名を弥三郎といったが、とりあえず日蓮を川奈の岩屋に匿い、女房に相談した。
「何でもええから、食いもんを持って行ってやっとくれ」
女房は自分達の食物も少ないことを思い文句を言いかけたが、この人の好い夫に何を言っても無駄だと思い直し、苦笑して食事を用意してやった。
狭い岩屋、粗末な食事に日蓮は文句も言わずむしろ楽しそうだった。罪人なら罪人らしく大人しくしていれば良いのに、近所に出かけては漁師や百姓を手伝い、そのついでにお題目をやらせたがる。貧しい村のこととて、皆生きるのに精いっぱい。迷惑がる村人が多かったが、そのうち南無妙法蓮華経、と唱える者も出てきた。
「おら、ナムミョーホーレンゲキョーたらどういう意味だ、って聞いてみただ」
とある日、弥三郎の女房が言い出した。
「ほう、それで?」
「法華経ちゅうお経が一番偉いって意味だそうじゃ。だども、そう言ってたら鎌倉をおん出されたそうな」
「何故じゃ」
「分からん」
ギャテーギャテーとかいう般若心経くらいは弥三郎も聞き覚えがあった。いずれにしろお経はどれも有難いものだと思っている。どのお経が偉くてどのお経が駄目だなどと考えてよいものか。
「ふうん…よし、明日はおらが食い物を届けに行ってみるだ」

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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