誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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日蓮伊豆法難 第七章 祈祷
歩いて行くからと嫌がる日蓮を、正清と御付の小者が無理に馬に乗せ、正清が自ら手綱を取った。
「日蓮様?どうしただ」漁の帰りにたまたま通りかかった弥三郎が驚いて問いかけた。
「いや面目ない。とうとう説得されてしもうての」天に何ら恥じるものはないと思っていた日蓮、特に罪は犯さずともたわいないことで恥じることもあるものじゃな、と思った。正清は糞まじめに胸を張り馬子の役をつとめているが、御付の者は背後で笑いをかみ殺している。
玖須美館に着くや、すぐに伊東朝高の枕頭へ呼ばれた。朝高が潤んだ目で、分かっているのかいないのか、日蓮をじっと見つめる。その顔を覗き込んだ日蓮、病状を説明しようとする正清を遮り
「お主は命を懸けて朝高殿を法華経に帰依させると申したの。わしも命を懸けて祈祷を致すつもりじゃ」と後は何も言わず朝高へ向き直り法華経を唱え出した。
命を懸けるという日蓮の言葉は嘘では無かった。経を唱えるゆえ水くらいは飲むが食事もとらず、時々うとうととはするようだが横にもならずに祈り続けた。
一日目、あれほどの唸り声が静かになってきた。
二日目、あれほどの熱がようよう引いてきた。
三日目、朝高がようやく目を開け口を開いた。
「日蓮どのか…感謝いたす」日蓮をしっかり見つめ、小さいが確かな声音で朝高が呟いた。
その場にいた正清は感涙にむせびながら、はて殿は今まで眠っていたはず、誰か日蓮の名を殿に教えたろうか、と不思議に思った。
「もう大丈夫じゃ、横にならせてくれい」おどけるように怒鳴り立ち上がった日蓮、寝不足でさすがによろめき、正清が慌てて支えた。
大喜びで家人達が別室に寝具を整えると、日蓮はすぐに横になり高いびきをかき始めた。
日蓮様のいびきは殿の唸り声に勝るとも劣らぬぞえ、と口の悪い下働きの女中の申すことに、久しぶりに屋敷中が明るい声で笑いあった。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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