誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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日蓮伊豆法難 終章 赦免
「赦免?突然でございますな」虚空蔵菩薩に教えられてとっくにもう分かっていたが、しらばっくれて微笑む日蓮。
「うむ、北条時頼様のお計らいじゃ。わしも随分取り成したがの」と朝高はにこやかに赦免状を見せた。
朝高の取り成しくらいで北条時頼が動くはずがない、そもそも取り成しなど出来るかどうか、と日蓮は思ったが無論顔には出さず
「ありがたき幸せ。早速に出立の準備を致します」と畏まって礼を述べた。
「ところで…」と急に声をひそめた朝高が「わしが仏像をそなたに渡したことは鎌倉では言い触らさんでくれよ」
相変わらず地頭の根性が抜けきらない朝高に苦笑しつつ、「承知いたしました」と答え日蓮は席を立ち、住処へ向かった。
もう住み慣れた感のある毘沙門堂で、伊東で出来た弟子達が別れを惜しんだ。
「流罪というのも、なかなかに楽しいものであったな」
日蓮の冗談に、泣いていた弟子達も笑い出した。
すっかり旅支度を整えてあとは鎌倉へ帰るだけである。だが日蓮は思いついて、富戸の鳥崎、のちに日蓮崎と言われる岬へと寄ってみた。
ここからは、日蓮が最初に置き去りにされたまないた岩が小さく眺められる。波の音の轟く岬で、日蓮が太い声で語り出した。
「思えばわしがあそこに着いてから色々あったな、弥三郎。わしが助けられたのは五月、米が余っておる時期ではない。それなのにお主達はわしをひと月も養ってくれた。まことに、わしの父母が伊東に生まれ変わったのかと思うほどであった。礼を言うぞ。お主達のことは決して忘れぬ」
背後で見守っていた弥三郎夫妻、返事も出来ずただ泣くばかりであった。
この後、日蓮は伊東で得た立像釈尊を生涯、随身仏として持ち続けた。それは、伊東での思い出のためではなかったろうか。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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