誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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伊東妖怪伝 第二章 天狗の詫び証文
伊東から中伊豆へ抜ける峠、柏峠。数百年前に天狗が住み着き、旅人や村人に悪さをした。そこで仏現寺のお坊さんが天狗の住処は峠の大きな松だろうと目星をつけ、七日七晩も経を読んだ。絶対、途中で寝ただろ。まあともかくその後、松の上の方から巻物が降ってきた。そこに書かれた文字は誰も読めなかった…はずなのに天狗の詫び証文であることは分かっている。なんでだ。とりあえず天狗の悪さは収まったそうな。
0061-thumb.jpg仏現寺は何のことはない、市役所のすぐそばだ。裏の駐車場側の門を出るとすぐ左。古風な大きな白木の門をくぐり、左へ行くと薄緑の屋根の本堂がある。近代的な市役所の建物の近くに古風なお寺があるのが不思議な感じ。
全く大した距離じゃないのに、美香と二人ちょっと歩いただけでもう汗ばんでいる。砂利を踏みしめつつ本堂の中をのぞくと誰もいない。
「こんにちはぁ。市役所の者ですがぁ。ぶらんぽの…」
「ああ、お聞きしております。どうぞお上がりください」とにこにこした年配の住職が奥から出てきた。天狗が出てこなくてよかった、とおバカなことを考えつつ中へ上がる。板敷の本堂は外よりは多少は涼しい。
 やけに若いお嬢ちゃん達だな、という顔つきをした住職は、それでも一応は座布団と茶をすすめてくれた後、詫び証文を持ってきてくれた。
「へえ」「長いねえ」
幅40センチ弱の長さ3メートル以上。何語か分からない文字が三千字ほど、ぎっしり書かれている。ところどころに丸い印。一つも同じ文字がないそうだけど。偉い学者さんに見せても読めなかった字を、私なんかが見たってどうにもならない。それでも自分なりに神妙な面持ちを作って眺めていると、隣の美香がデジカメを持ったまま何も撮らずにぶつぶつとつぶやいている。
「美香?どうしたの?」
 白い手を証文に差し伸べる美香。大きな瞳がうつろで何かに憑かれたような。
「ちょっと、触っちゃダメだよ」と止めるのも聞かず、中央の目のような円い印に触れる。
「おい」と住職の声、一瞬、美香の背後に赤い顔が見えた…
「ああっ!」美香の叫びとともに真っ二つに裂ける証文。と同時に本堂がぎしぎしと揺れだした。真っ青な顔の美香が長い髪を乱して倒れこむ。
「証文がっ!地震がっ!いや、とにかく医者だ!」歳に似合わぬ慌てぶりで揺れる本堂から廊下へ走り去る住職。
「美香ぁ!返事してよぉ!」この暑いのに美香の体、冷たいよ…
救急車が到着し、ひと騒ぎのあと、美香は伊東市民病院に担ぎ込まれた。ぼろぼろと涙をこぼしながらも、私は何かが気になった。あの時、美香の背後に見えた顔は…

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