誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
曽我物語異聞 第二章 音無神社
空を行く祐経を目で追いながら、私達三人は松川沿いの遊歩道の石畳を駆けてゆく。
「何もあんなもん追わなくても…」とぼやく私、
「妖怪の次は幽霊?もうやだぁ」と文句をいう美香に
「大変なことが起こる予感がするの、とにかく走って!」と急かす百合さん。大変なことなら私達三人の行く先々で十分起こっているので後は静かに余生を過ごしたい。余生長いけど。
祐経は松川を遡り、やがて通学橋を越えた。右手奥に日暮神社、左手に音無神社。
岡橋まで行かずに祐経は空中に止まり、俯いて何かつぶやいている。
「祐親の娘が乳繰り合った音無の森か…その向こうが最誓寺…」
源頼朝は、父義朝が平治の乱で平家に敗れたため、蛭ヶ小島に流されてきた。その頃、頼朝は伊東祐親の娘の八重姫に会うためにわざわざ毎夜馬で伊東まで駆けてきたという。スケベな男である。八重姫に会うために頼朝が待っていたのが日暮の森、現在は日暮神社が建っている。そして八重姫と落ち合ったのが音無の森にある音無神社。現在は森はないが巨木が残っている。音無という名は、頼朝が逢引きの最中、川の音を叱ると音が無くなったという嘘っぽい伝説から。現在、岡橋には頼朝と八重姫のレリーフが飾られている。
0142-thumb.jpg
八重姫と頼朝の間には千鶴丸という子が生まれた。だが、当時は平家全盛の世であり、源氏の嫡男の頼朝の子である千鶴丸は、伊東祐親の命令で松川の稚児が淵に沈められた。その千鶴丸の供養のために八重姫が建てたのが、音無神社の向こうの最誓寺だ。
0069-thumb.jpg
「音無とはつまらん名前じゃ。音を立ててくれよう」
ざばああああっ、とものすごい音を立てて松川の水が盛り上がった。数メートルはあろうかという巨大な水球が音無神社に襲いかかる!がらん、ぐわっしゃん、と地響きをたてて音無神社の社、鳥居、タブの木が倒れる、そして、道路を越えて最誓寺の壁を叩き潰す!多くの墓石が発砲スチロールで出来ているかのように簡単に流されてゆく。寺の本堂や伊東家の墓、樹齢六百年の大ソテツも一気に流される。どどどどどっ、と国道135号線の上に瓦礫が散らばり、ヘッドライトに照らされる。あわてて急ブレーキをかけた乗用車。そこへ、どかあん、どかあん、と次々に後続車が衝突する。
音無神社があった場所まで走ってきた私達三人、息を切らしながらこの大惨事を眺めた…あれ?美香だけ息が上がってない。様子が変だ。
「おのれ祐経…」いつもは天然でぼおっとした美香の顔が、怒りで険しいものの気品にあふれている。
「えっ。何言ってるの、美香?」
「わらわは八重姫。工藤祐経の所業を見かね、この娘の体を借り参上した」美香も色んなものに取り憑かれる子だねえ。天狗よりはましか。
「ふん、八重姫じゃと?おなごの身で何が出来る」頭上で不敵に笑う祐経、夜空に上昇して南へ。忙しい幽霊さんだ。

小説 ブログランキングへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村

スポンサーサイト

テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
コメント
コメントの投稿
URL:
本文:
パスワード:
非公開コメント: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
トラックバック URL
トラックバック
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。