誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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曽我物語異聞 第三章 大楠
「行くとしたら…方角的に、伊東祐経の墓?」と呟く百合さん。
「父上の?!」驚愕する八重姫。いきなり私達の手を取ると、ふわりと舞い上がった。「えっ何?」腕力で持ち上げるのでなく、霊力で持ち上げているようで、私の手は全く痛くない。
「わあ…」「すごいねえ」こんな時だが、満天の星の下を飛ぶのは楽しかった。
眼下の音無神社や最誓寺の見る影もない残骸を越えると、伊東警察署の方からパトカーが何台かやってくるのが見えた。通学橋の袂の消防署からも消防車がやかましくサイレンを鳴らしてやってくる。騒がしくなった伊東の街の夜空を、私達は前方の祐経の黒い姿を追って飛んでゆく。
本郷公園を越えた辺りで、祐経の姿がふっ、と消えた。
「あれ?どうしたん?」
「いずれにしろ父上の墓をお守りせねば」
0124.jpg
葛見神社を越えようとした時、暗い中を下から巨大な物体が勢いよく突き上げてきた。
「うわああああっ!」私と百合さんに掠ったものの、八重姫がかろうじて落ちないように支えてくれる。
「いったあい…何?」
飛んでゆく方向を見ると巨大な根っこのようなものが?
あの方向は…まさか…
どどおおおおんっ、とものすごい音をたてて土埃が舞い立った。
八重姫が急いで急降下する。
「これは…」
0127.jpg
伊東祐親の墓のあった場所に、巨大な樹が生えていた。岩のような幹の上に二本の大枝がV字型にそびえている。
「葛見神社の大楠ね」と百合さん。葛見神社は伊東家の守護神。境内に生えている…いや生えていた樹齢千年以上の大楠は天然記念物に指定されている。祐経くん、国に叱られるぞ。大楠のそばには伊東祐親の墓が無残に砕け、祐親の歌碑が倒れている。
「うわっははははは」という馬鹿笑いに上を見上げると、大楠の上で祐経が仁王立ちしている。
「そうさな、お次は東林寺の曽我兄弟の首塚でも壊すか」
「馬鹿なことをっ」怒りと涙で鬼女の表情の八重姫、赤い玉となって急上昇した。
さすがに意表を突かれた祐経、もろに攻撃を受けてよろける。
体勢を立て直し、首をかしげた祐経、「ふむ、思いついた…」とにやりと笑う。
「何を思いついたというのです」
「東林寺は後回しだ。取りあえず、奥野の河津三郎の像でも破壊するか」
言い捨てて、着物を翻し南へ飛んでゆく祐経。
「変ね…河津三郎のモニュメントなんて最近作られたばかりで、あえて破壊しに行くほどのものかしら」百合さんが首をかしげる。
「わざわざ行先を告げたのは、罠ってこと?」奥野へ行くと見せかけて東林寺かも。
「しかし祐経殿を止めねば」厳しい表情の八重姫に気圧される形で三人は再び飛び上がった。

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