誰にも頼まれていないのに伊東市の観光地を紹介する謎の小説
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伊東沖海戦 第七章 松川河口
下流へ向かう伊東水軍を追って、私達も川沿いの遊歩道を下っていった。なぎさ橋の向こうに、サン・ブエナ・ベンツーラ号の巨大な船影が見えてきた。
「ふん、そんな小舟でわしに逆らうつもりかぁ!」と天狗の声が響き、巨船が前進する。何のためらいもなく、なぎさ橋を直撃!がらがらがらっ、と国道135号バイパスが崩れ落ちる。クラクションの響き、人々の叫び。ひんまがった街路灯や砕けたアスファルトが伊東水軍の和船の上にどしゃん、どしゃん、と落ちてゆく。
なぎさ橋
しかし伊東水軍、120トンの洋式帆船に比べれば小ぶりの感は否めないが、数では圧倒している。
「者ども、ひるむなぁ!」
小回りの利かないサン・ブエナ・ベンツーラ号を、軽快な動きでたちまちのうちに取り巻いた。
即座に火矢が巨船に放たれてゆく。見ていて小気味よいくらいの戦上手だ。
「おのれぇ!」と叫ぶ天狗が化けた三浦按針。甲板へ何か引き出してきた。
「あ、あれ大砲じゃない?」
三浦按針が日本に漂着された時に難破船に積まれていた大砲は、関ヶ原の戦いで徳川家康が利用したらしい。妖怪達、そんなディテールまで化けてくれなくてもよいのに。
どかあん、と発射された玉は、まっすぐに伊東祐親の乗る船に命中した。砕け散る船、たまらず吹っ飛ばされる祐親。
「ああ!」と私が悔しがって叫ぶ横で、
「おのれ…」と美香が妙な声を出す。
「え、美香?あ、八重姫様…」
能天気バージョンから凛とした顔に変化した美香、颯爽と空に舞い上がった。よくころころ変われるね、この子は。
海に落ちた祐親をさっと持ち上げ近くの船に乗せた八重姫。
「おお、八重姫か?すまぬな」という祐親に微笑みかけた八重姫が可愛いなと思ったのも束の間、すぐに鬼のような形相で大砲をにらみつける。
八重姫の体が怒りの赤いオーラに包まれる。
火の玉のようになった八重姫、大砲に突進!天狗もろとも突き倒す!
たまらず、巨船が化けの皮をはがす。船体が赤っぽくなり、マストが角に…下から脚が生え、巨大な獣の姿となった。
「ああ、やっぱり大池の赤牛!」
赤牛の背に悔しそうな表情の天狗が乗っていた。すぐに飛び立とうとする。
「あの天狗を狙え!」矍鑠とした伊東祐親老人の声。頑張って後期高齢者に夢を与えてください。
たちまち火矢が放たれ、天狗の羽に火が燃えうつる。
「し、しまった…」失速し墜落する天狗。「うおおおおお!」断末魔の悲鳴を上げて赤牛の背にどさりと落ちる。下の赤牛も何百本もの矢を体に打たれ息も絶え絶えだ。ぶもおおおお、とものすごい吠え声。肉の焦げる匂いが私達のところまで漂う。こんなビフテキは食べたくない。
すとん、と私達の横に降り立った八重姫、「もう大丈夫」と凛とした顔。途端に顔がゆるみ「良かったねぇ」と美香が微笑んだ。なんだかギャグみたいな子だ。

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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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